手のわろき人のはばからず文書きちらすはよし。みぐるしとて、人に書かするはうるさし。
わろき(し):相対的によくない。⇔あし。
よし:絶対的によい。⇔よろし。
「字の下手な人が遠慮せず手紙を筆に任せて無造作に書くのはよい。見苦しいと言って、人に書かせるのは煩わしく嫌な感じだ。」
また、話題が変わる。よしなしごとをそこはかとなく書き綴っていることを示すためか。読者を飽きさせないためか。ただし、敢えて前段との関連を指摘すれば、自己の経験、自己ですることを重んじるべしということで繋がる。
人間がいかにに見栄っ張りであるかがわかる。少しでも格好をつけようとする。しかし、下手な字は、むしろ人の優越感に働きかける。嫌がられることは少ないのだ。
コメント
手紙を書くのが好きなのですが悪筆。でも伝えたい気持ちが勝ってやはり書いてしまいます。兼好に褒めてもらった気分です。悪筆であっても、読みやすいようにと相手を思って自筆で丁寧に書くのと、悪筆だから代書してもらうのとどちらが良いかと言ったら、文字を見て「あの人からのお便りだ」とわかる方が嬉しいです。
私も同感です。ただ、私の場合、書いているうちに自分の字が嫌になってきます。それが内容にも反映するのか、思いが上手く書けなくなてきます。その点、メールはありがたいです。兼好の言うことがもっともであることはよくわかります。