山月記    中島敦

 年度が替わりました。昨年は新型コロナウイルス肺炎が世界的に流行しました。まだ完全には治まっていません。今では、自粛の生活を強いられることはなくなりました。しかし、これを機に何かが変わりました。以前とは、社会の原理がどこか違います。たとえば、グローバル化が手放しでは受け入れられなくなりました。日本でも、東京がこれまでのような憧れの地ではなくなりました。一極集中が崩れてきました。職住一致が進められるようになりました。ある意味で、以前よりも人間らしい生活に近づいてきたのかもしれません。
 学校は以前より小さな存在になりました。それは拘束時間だけでなく、生徒の意識の中ででもです。つまり、生活の中心と言うよりは、一つの大きな部分になりました。
 武井若葉先輩は、卒業しました。国立大学の文学部に進みました。言語学を専攻するそうです。きっぱりした先輩らしい選択です。コロナウイルスの影響で混乱する中、自分を見失わず入試を乗り切りました。
 文芸部の班は再編制されました。うちの班は、班長は、高3になった葵春菜先輩です。この一年ですっかり文芸部員らしくなりました。面白い小説も書いています。高2になったあたし(島田美奈子)と高1になった桐野美鈴は一緒です。それに、中2の小山内純子が加わりました。純子は、ちょっと中2病にかかっているので、どうなることやら心配です。まあ、何とかなるでしょ。みんな通ってきた道だから。
 今度読む作品は、中島敦の『山月記』です。虎に変身する話です。ただ、難しい漢語がいっぱい出てくるので、純子には少し難しいかな?でも、内容は今のあたしにぴったりです。とても読み応えのある作品です。
 そこで、今回は高校生三人が中2の純子にわかりやすく解説していきます。
 最初に誠先生から次のようなアドバイスをもらいました。
「この作品は、主人公の告白が中心に書かれています。つまり、主人公が自分の身の上を話します。とても細やかに自己分析を行っています。正確に読み取ってください。ただし、そこで注意しなければいけないのは、どこまで正直に語っているかです。ですから、まずは言い分を聞くにしても、そのまま受け取ってはなりません。なぜなら、人は都合の良いことしか言わないからです。特にこの作品の主人公はそうです。ゆめゆめ騙されないようにしてください。」
 この作品はなかなか手強そうです。

コメント

  1. らん より:

    先生、前に読んだことがある作品なのですが、すっかり忘れてしまいました。
    また一から勉強しますので、よろしくお願いいたします。
    ポイントは、騙されないようにというところですね。

    • 山川 信一 より:

      『山月記』は一見難しそうに見えます。でも、読んでみると私たちがよく経験することが書かれています。
      むしろ、とても身近な内容が語られています。きっと興味深く読めることでしょう。
      また、独特の文体も楽しんでください。

  2. nina より:

    こんにちは。
    来てみました。
    これからも学校の課題の合間にこれればと思います。

    • 山川 信一 より:

      いらっしゃい。
      『山月記』は、最初に難しい語句がいっぱい出てくるので、難しそうに見えますが、テーマは身近で興味深いものです。
      質問があれば、何でも聞いてください。

  3. nina より:

    あの、「山月記」とは関係ないのですが、「海の命」という作品をご存知でしょうか。

    小学校で習った最後の作品でした。

    私はこの授業がとても好きで、この時のノートだけはきちんととってあります。

    難しかったけれど、なんども「あぁ、そういうことか!」と頭の中で結びつくときがとても楽しかったです。

    そのうち「海の命」も扱っていただけませんか?

    • 山川 信一 より:

      立松和平氏の作品ですね。思い出の授業だったのですね。
      わかりました。考えておきます。ただ、ninaさんの美しい思い出を壊すかもしれませんよ。
      私は容赦のない教師なので(笑)。
      前回の質問の補足です。時計を見ることについてです。松本隆作詞・松田聖子の『赤いスイトピー』に次のようにありました。
      「四月の雨に降られて駅のベンチで二人 他に人影もなくて不意に気まずくなる 何故 あなたが時計をチラッと見るたび 泣きそうな気分になるの?」

  4. nina より:

    ありがとうございます。
    大丈夫です、新たな思い出になるだけですから(笑)

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