古典

第百九十段  恋愛主義

妻といふものこそ、男の持つまじきものなれ、「いつも独り住みにて」など聞くこそ、心にくけれ、「誰がしが婿になりぬ」とも、又、「如何なる女を取りすゑて、相住む」など聞きつれば、無下に心おとりせらるるわざなり。「ことなる事なき女をよしと思ひ定めて...
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《雁は使者》

これさたのみこの家の歌合のうた とものり あきかせにはつかりかねそきこゆなるたかたまつさをかけてきつらむ (207) 秋風に初雁が音ぞ聞こゆなる誰が玉梓を掛けて来つらむ 「是貞親王の家の歌合の歌  友則 秋風に初雁の声が聞こえるようだ。誰の...
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第百八十九段  この世は不確かなもの

今日は、その事をなさんと思へど、あらぬ急ぎ先づ出で来て、まぎれ暮し、待つ人は障り有りて、頼めぬ人は来り、頼みたる方の事は違ひて、思ひよらぬ道ばかりはかなひぬ。わづらはしかりつる事はことなくて、やすかるべき事はいと心苦し。日々に過ぎ行くさま、...