古典

第五十五段 ~復縁を賭ける~ 

昔、男、思ひかけたる女の、え得まじうなりての世に、 思はずはありもすらめど言の葉のをりふしごとに頼まるるかな  昔、男が思いを掛けた女が、今では、手に入れることができそうにもなくなって(「え得まじうなりて」「まじ」は打消推量の助動詞。)、し...
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第五十四段 ~恋の闘い~

昔、男、つれなかりける女にいひやりける。 ゆきやらぬ夢路を頼むたもとには天つ空なる露や置くらむ 前の段の女と同一人物かはわからないけれど、そう読んだ方が面白い。〈つれなし〉は、冷たい、薄情だということ。依然として逢うのが難しく、手こずってい...
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第五十三段 ~満たされない愛~

昔、男、あひがたき女にあひて、物語などするほどに、とりの鳴きければ、 いかでかはとりの鳴くらむ人しれず思ふ心はまだ夜ぶかきに  なかなか逢えない女にようやく逢って、話などするうちに、鶏が鳴いて帰る時間になったので、〈どうして(「いかでかは」...