古典 残月光冷ややかに 時に、残月、光冷《ひや》やかに、白露は地に滋《しげ》く、樹間を渡る冷風は既に暁の近きを告げていた。人々は最早、事の奇異を忘れ、粛然として、この詩人の薄倖《はっこう》を嘆じた。李徴の声は再び続ける。 春菜先輩に戻った。今日の割り当て箇所は短... 2020.05.26 古典
古典 自嘲癖 旧詩を吐き終った李徴の声は、突然調子を変え、自らを嘲《あざけ》るか如《ごと》くに言った。 羞《はずか》しいことだが、今でも、こんなあさましいに身と成り果てた今でも、己《おれ》は、己の詩集が長安《ちょうあん》風流人士の机の上に置かれている様を... 2020.05.25 古典
古典 非常に微妙な点において欠ける 袁傪は部下に命じ、筆を執って叢中の声に随《したが》って書きとらせた。李徴の声は叢の中から朗々と響いた。長短凡《およ》そ三十篇、格調高雅、意趣卓逸、一読して作者の才の非凡を思わせるものばかりである。しかし、袁傪は感嘆しながらも漠然《ばくぜん》... 2020.05.23 古典