古典

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第五十八段 ~田舎の女たち~

昔、心つきて色好みなる男、長岡といふ所に家つくりてをりけり。そこのとなりなりける宮腹に、こともなき女どもの、ゐなかなりければ、田刈らむとてこの男のあるを見て、「いみじのすき者のしわざや」とて、集りて入り来ければ、この男、逃げて奥にかくれにけ...
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第五十七段 ~泣き落とし~

昔、男、人しれぬもの思ひけれ。つれなき人のもとに、 恋ひわびぬあまの刈る藻にやどるてふわれから身をもくだきつるかな  昔、男が人知れず恋に悩んでいた。冷淡な(「つれなき」)人の元に、〈叶わぬ恋に悩んで、途方に暮れています。漁師が刈る藻に宿る...
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第五十六段 ~どこまでも~

昔、男、ふして思ひおきて思ひ、思ひあまりて、わが袖は草のいほりにあらねども暮るれば露のやどりなりけり  男は、寝ても覚めても女のことを思い、とうとう心の中で思っているのに耐えられず、〈私の袖は草の庵では無いけれど、日が暮れるといつも露が宿る...