古典

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第百十一段 ~恋のチャンス~

昔、男、やむごとなき女のもとに、なくなりにけるをとぶらふやうにて、いひやりける、  いにしへはありもやしけむいまぞしるまだ見ぬ人を恋ふるものとは返し、 下紐のしるしとするも解けなくに語るがごとは恋ひずぞあるべきまた、返し、 恋しとはさらにも...
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第百十段 ~命令口調~

昔、男、みそかに通ふ女ありけり。それがもとより、「今宵夢になむ見えたまひつる」といへりければ、男、  思ひあまりいでにし魂のあるならむ夜ぶかく見えば魂結びせよ 昔、男がこっそり通う女がいた。その女のもとから「今夜夢にあなたがお現れになりまし...
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第百九段 ~失恋を慰める~

昔、男、友だちの人を失へるがもとにやりける、 花よりも人こそあだになりにけれいづれをさきに恋ひむとか見し 昔、男が、友だちで(「友だちの」の「の」は同格。)、恋人を失った人のもとに歌を贈ってやった、〈当てにならないはずの桜の花よりも愛する人...