古典

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第百六十五段  鳥なき里の蝙蝠

吾妻の人の都の人に交り、都の人の吾妻に行きて身をたて、又、本寺本山を離れぬる顕密の僧、すべて我が俗にあらずして人に交れる、見ぐるし。 顕密:真言宗(密教)と他宗(顕教)。 「東国の人が都の人に交るとか、都の人が東国に行きて立身するとか、また...
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《秋の短夜》

寛平御時、なぬかの夜うへにさふらふをのことも歌たてまつれとおほせられける時に、人にかはりてよめる とものり あまのかはあさせしらなみたとりつつわたりはてねはあけそしにける (177) 天の河浅瀬白浪辿りつつ渡り果てねば明けぞしにける 「宇多...
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第百六十四段  無駄話の効用

世の人あひ逢ふ時、暫くも黙止する事なし。必ず言葉あり。その事を聞くに、多くは無益の談なり。世間の浮説、人の是非、自他のために失多く、得少なし。これを語る時、互ひの心に無益の事なりといふ事を知らず。 「世の中の人は、人に対面する時、少しの間も...