古典

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第百七十六段  黒戸の謂われ

黒戸は、小松御門位につかせ給ひて、昔ただ人におはしましし時、まさな事せさせ給ひしを忘れ給はで、常にいとなませ給ひける間なり。御薪(みかまぎ)にすすけたれば、黒戸といふとぞ。 黒戸:内裏の清涼殿の萩戸。 ただ人:天皇・皇族・摂政・関白に対して...
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《明るい秋の月》

題しらす よみ人しらす しらくもにはねうちかはしとふかりのかすさへみゆるあきのよのつき (191) 白雲に羽うちかはし飛ぶ雁の数さへ見ゆる秋の夜の月 「白雲に羽を交えて飛ぶ雁の数まで見える秋の夜の月の明かるさ。」 「さへ」は副助詞で添加を表...
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第百七十五段  酒の効用

かくうとましと思ふものなれど、おのづから捨てがたき折もあるべし。月の夜、雪の朝、花の本にても、心長閑に物語りして盃出したる、万の興をそふるわざなり。つれづれなる日、思ひの外に友の入りきて、とりおこなひたるも、心なぐさむ。なれなれしからぬあた...