古典

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第三十二段 ~昔の女~

昔ものいひける女に、年ごろありて、 いにしへのしづのをだまきくりかへし昔を今になすよしもがなといへりけれど、なにとも思はずやありけむ。 「ものいひける」は〈情を通わせた・ねんごろになった〉。その女に、数年(「年ごろ」)経ってから歌を贈る。「...
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第三十一段 ~意外な恨み~

昔、宮のうちにて、ある御達の局の前を渡りけるに、なにのあたにか思ひけむ、「よしや草葉よならむさが見む」といふ。男、 つみもなき人をうけへば忘れ草おのが上にぞ生ふといふなるといふを、ねたむ女もありけり。  意味を取ってみると次のようになる。 ...
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第三十段 ~わずかに逢った女~

昔、男、はつかなりける女のもとに、 あふことは玉の緒ばかりおもほえてつらき心の長く見ゆらむ  恋も様々である。わずかに(「はつかなり」)逢うことしかできなかった女もいる。逢うことはできたけれど、女がなかなか逢ってくれない。女は何かが気にいら...