山川 信一

古典

《女の思い》

題しらす 伊勢 しるといへはまくらたにせてねしものをちりならぬなのそらにたつらむ (676) 知ると言えば枕だにせで寝しものを塵ならぬ名の空に立つらむ 「題知らず 伊勢 知ると言うから枕さえもしないで寝たのに塵ではない名がどうして空に立って...
古典

《春霞のように》

題しらす よみ人しらす きみによりわかなははなにはるかすみのにもやまにもたちみちにけり (675) 君により我が名は花に春霞野にも山にも立ち満ちにけり 「題知らず 詠み人知らず 君により私の噂は花々しくいっぱいに立ってしまったことだなあ。」...
古典

《枕詞の効果》

題しらす よみ人しらす むらとりのたちにしわかないまさらにことなしぶともしるしあらめや (674) 群鶏の立ちにし我が名今更に事無しぶとも験あらめや 「題知らず 詠み人知らず 立ってしまった私の名。今更何も無かったふりをしても効果があるだろ...