山川 信一

古典

第四段 その一

昔、東の五条におほきさいの宮おはしましける西の対にすむ人ありけり。それを、本意にはあらで、心ざしふかかりける人、ゆきとぶらひけるを、正月の十日ばかりのほどに、ほかにかくれにけり。あり所は聞けど、人のいき通ふべき所にもあらざりければ、なほ憂し...
古典

「けり」の意味 ~確認~

「男ありけり」などの「けり」はその動作が過去のものであることを表す。たとえば、「男ありけり」なら、男がいることが過去のことであることを表す。つまり、「けり」は過去の助動詞である。  ただし、話し手はこの動作を実際に経験していない。ただ、それ...
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第三段 ~恋は貧しくとも~

昔、男ありけり。懸想じける女のもとに、ひじき藻といふものをやるとて、 思ひあらばむぐらの宿に寝もしなむひじきものには袖をしつつも  二条の后の、まだ帝にも仕うまつりたまはで、ただ人にておはしましける時のことなり。「懸想じける」(=思いを掛け...