山川 信一

古典

第八段 ~信濃国へ~

昔、男ありけり。京やすみ憂かりけむ、あづまの方にゆきて、すみ所もとむとて、友とする人、ひとりふたりしてゆきけり。信濃の国、浅間のたけに煙の立つを見て、  信濃なるあさまのたけに立つけぶりをちこち人の見やはとがめぬ 「京やすみ憂かりけむ」は疑...
古典

第七段 ~センチメンタルジャーニー~

昔、男ありけり。京にありわびてあづまにいきけるに、伊勢、尾張のあはひの海づらをゆくに、浪のいと白くたつを見て、  いとどしく過ぎゆく方の恋しきにうらやましくもかへる浪かな となむよめりける。  ここまでの段から続けて読むと、「京にありわびて...
古典

第六段 ~解説の役割~

これは二条の后の、いとこの女御の御もとに、仕うまつるやうにてゐたまへりけるを、かたちのいとめでたくおはしければ、盗みて負ひていでたりけるを、御兄、堀川の大臣、太郎国経の大納言、まだ下﨟にて、内裏へ参りたまふに、いみじう泣く人あるを聞きつけて...