古典 第九段 その六 「京には見えぬ鳥なれば、みな人見しらず。渡守に問ひければ、「これなむ都鳥」といふを聞きて、 名にしおはばいざ言問はむみやこどりわが思ふ人はありやなしやと とよめりければ、船こぞりて泣きにけり。」 京では見かけない鳥なのである。渡守にその... 2019.05.16 古典
古典 第九段 その五 その河のほとりにむれゐて、思ひやれば、かぎりなく遠くも来にけるかな、とわびあへるに、渡守、「はや船に乗れ、日も暮れぬ」といふに、乗りて渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。さるをりしも、白き鳥の、はしとあしと赤き... 2019.05.15 古典
古典 第九段 その四 富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白うふれり。 時しらぬ山は富士の嶺いつとてか鹿子まだらに雪のふるらむその山は、ここにたとへば、比叡の山を二十(はたち)ばかり重ねあげたらむほどして、なりは塩尻のやうになむありける。 なほゆきゆきて、... 2019.05.14 古典