山川 信一

古典

第八十三段 ~御出家~

昔、水無瀬に通ひたまひし惟喬の親王、例の狩しにおはします。供に、馬の頭なるおきな仕うまつれり。日ごろ経て、宮にかへりたまうけり。御おくりしてとくいなむと思ふに、大御酒たまひ、禄たまはむとて、つかはさざりけり。この馬の頭、心もとながりて、  ...
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第八十二段 ~その三 主従関係~

親王、歌をかへすがへす誦じたまうて、返しえしたまはず。紀の有常、御供に仕うまつれり。それが返し、 ひととせにひとたび来ます君待てば宿かす人もあらじとぞ思ふかへりて宮に入らせたまひぬ。夜ふくるまで酒飲み、物語して、あるじの親王、酔ひて入りたま...
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第八十二段 ~その二 酒宴~ 

また、人の歌、 散ればこそいとど桜はめでたけれ憂き世になにか久しかるべきとて、その木のもとは立ちてかへるに、日暮になりぬ。御供なる人、酒をもたせて、野よりいで来たり。この酒を飲みてむとて、よき所を求めゆくに、天の河といふ所にいたりぬ。親王に...