山川 信一

古典

《恋の形見》

返し 近院の右のおほいまうちきみ いまはとてかへすことのはひろひおきておのかものからかたみとやみむ (737) 今はとて返す言の葉拾ひ置きて己がものから形見とや見む 「返し 近院の右大臣 今はと言って返す言葉を拾い置いて自分のものながら形見...
古典

《精一杯の皮肉》

右のおほいまうちきみすますなりにけれは、かのむかしおこせたりけるふみともをとりあつめて返すとてよみておくりける 典侍藤原よるかの朝臣 たのめこしことのはいまはかへしてむわかみふるれはおきところなし (736) 頼め来し言の葉今は返してむ我が...
古典

《恋の復活》

人をしのひにあひしりてあひかたくありけれは、その家のあたりをまかりありきけるをりに、かりのなくをききてよみてつかはしける 大伴くろぬし おもひいててこひしきときははつかりのなきてわたるとひとしるらめや (735) 思ひ出でて恋しき時は初雁の...