山川 信一

古典

《昔の主人を忍ぶ》

藤原のとしもとの朝臣の右近中将にてすみ侍りけるさうしの身まかりてのち人もすますなりにけるを、秋の夜ふけてものよりまうてきけるついてに見いれけれは、もとありしせんさいもいとしけくあれたりけるを見て、はやくそこに侍りけれはむかしを思ひやりてよみ...
古典

《庭を愛した友の死》

河原の左のおほいまうちきみの身まかりてののちかの家にまかりてありけるに、しほかまといふ所のさまをつくれりけるを見てよめる つらゆき きみまさてけふりたえにししほかまのうらさひしくもみえわたるかな (852) 君まさで煙絶えにし塩竈のうら寂し...
古典

《遺された者》

あるし身まかりにける人の家の梅花を見てよめる つらゆき いろもかもむかしのこさににほへともうゑけむひとのかけそこひしき (851) 色も香も昔の濃さに匂へども植ゑけむ人の影ぞ恋しき 「主が亡くなった人の家の梅の花を見て詠んだ 貫之 色も香り...