山川 信一

古典

《独り寝の気付き》

題しらす よみ人しらす あきならておくしらつゆはねさめするわかたまくらのしつくなりけり (757) 秋ならで置く白露は寝覚めする我が手枕の雫なりけり 「題知らず 詠み人知らず 秋でなく置く白露は寝て目が覚める私の枕の雫だったのだなあ。」 「...
古典

《自嘲》

題しらす 伊勢 あひにあひてものおもふころのわかそてにやとるつきさへぬるるかほなる (756) あひにあひて物思ふ頃の我が袖に宿る月さへ濡るる顔なる 「題知らず 伊勢 合いに合って物を思う頃の私の袖に宿る月までが濡れる顔であることだ。」 「...
古典

《救いの掛詞》

題しらす よみ人しらす うきめのみおひてなかるるうらなれはかりにのみこそあまはよるらめ (755) うきめのみ生ひて流るる浦なれば仮にのみこそ海人は寄るらめ 「題知らず 詠み人知らず 浮き芽ばかり育って流れる浦なので、刈りにだけ海人は寄って...