山川 信一

古典

《忘れられた妻》

題しらす さたののほる ひとりのみなかめふるやのつまなれはひとをしのふのくさそおひける (769) 一人のみながめふるやの妻なれば人をしのぶの草ぞ生ひける 「題知らず 貞登 一人だけで長雨が降るのを眺める古家の妻なので、人を偲んで忍草が生え...
古典

《夢にも逢えない仲》

題しらす けむけい法し もろこしもゆめにみしかはちかかりきおもはぬなかそはるけかりける (768) 唐土も夢に見しかば近かりき思はぬ仲ぞ遙けかりける 「題知らず 兼芸法師 中国も夢に見たので近かった。思わない仲こそが遥かなのだなあ。」 「(...
古典

《夢でも逢えない訳》

題しらす よみ人しらす ゆめにたにあふことかたくなりゆくはわれやいをねぬひとやわするる (767) 夢にだに逢ふこと難くなりゆくは我や寝を寝ぬ人や忘るる 「題知らず 詠み人知らず 夢でさえ逢い難くなっていくのは、私が寝ないのか。あの人が忘れ...