山川 信一

古典

《夏の夕暮れの女》

題しらす よみ人しらす こめやとはおもふものからひくらしのなくゆふくれはたちまたれつつ (772) 来めやとは思ふものから蜩の鳴く夕暮れは立ち待たれつつ 「題知らず 詠み人知らず 来るだろうかと思うものの蜩の鳴く夕暮れは待たれながら。」 「...
古典

《泣き暮らす女》

題しらす 僧正へんせう いまこむといひてわかれしあしたよりおもひくらしのねをのみそなく (771) 今来むと言ひて別れし朝より思ひくらしの哭をのみぞ泣く 「題知らず 僧正遍昭 直ぐ来るだろうと言って別れた朝から物思いに毎日一日中泣いてばかり...
古典

《荒れた心》

題しらす 僧正へんせう わかやとはみちもなきまてあれにけりつれなきひとをまつとせしまに (770) 我が宿は道も無いまで荒れにけりつれなき人を待つとせし間に 「題知らず 僧正遍昭 私の家は道も無いまでに荒れてしまったことだなあ。冷たい人を待...