山川 信一

古典

《甲斐のない桜》

題しらす よみ人しらす たれみよとはなさけるらむしらくものたつのとはやくなりにしものを (856) 誰見よと花咲けるらむ白雲の立つ野と早くなりにしものを 「題知らず 詠み人知らず 誰が見ろと花が咲いているのだろう。白雲が立つ野と疾うになって...
古典

《郭公からの連想》

題しらす よみ人しらす なきひとのやとにかよははほとときすかけてねにのみなくとつけなむ (855) 亡き人の宿に通はば郭公かけて音のみ泣くと告げなむ 「題知らず 詠み人知らず 亡くなった人の家に通うなら、郭公よ、心に掛けて私が声を上げて泣い...
古典

《亡き父の歌》

これたかのみこの、ちちの侍りけむ時によめりけむうたともとこひけれは、かきておくりけるおくによみてかけりける とものり ことならはことのはさへもきえななむみれはなみたのたきまさりけり (854) ことならば言の葉さへも消えななむ見れば涙の滝勝...