山川 信一

古典

《消えない泡》

題しらす とものり みつのあわのきえてうきみといひなからなかれてなほもたのまるるかな (792) 水のあわのきえてうき身といひなからなかれて猶もたのまるるかな 題知らず 友則 水の泡の消えでうき身と言ひながらなかれて猶も頼まるるかな 「題知...
古典

《燃ゆれど萌えず》

物おもひけるころ、ものへまかりけるみちに野火のもえけるを見てよめる 伊勢 ふゆかれののへとわかみをおもひせはもえてもはるをまたましものを (791) もの思ひける頃、ものへ罷りける道に野火の燃えけるを見て詠める 伊勢 冬枯れの野へと我が身を...
古典

《歌の演出》

あひしれりける人のやうやくかれかたになりけるあひたに、やけたるちのはにふみをさしてつかはせりける こまちかあね ときすきてかれゆくをののあさちにはいまはおもひそたえすもえける (790) 逢ひ知りける人の漸う離れ方になりける間に、焼けたる茅...