山川 信一

古典

《「憂し」から「恨み」へ》

題しらす 典侍藤原直子朝臣 あまのかるもにすむむしのわれからとねをこそなかめよをはうらみし (807) 海人の苅る藻に住む虫のわれからと音をこそ鳴かめ世をば恨みじ 「題知らず 典侍藤原直子朝臣 漁師が苅る藻に住む虫の私であるからと声を出して...
古典

《恋は憂し》

題しらす よみ人しらす みをうしとおもふにきえぬものなれはかくてもへぬるよにこそありけれ (806) 身を憂しと思ふに消えぬ物なればかくても経ぬる世にこそありけれ 「題知らず 詠み人知らず 身をつらいと思うのに消えないものだから、このように...
古典

《恋への感慨》

題しらす よみ人しらす あはれともうしともものをおもふときなどかなみたのいとなかるらむ (805) あはれとも憂しともものを思ふ時などか涙のいとながるらむ 「題知らず 詠み人知らず 胸がいっぱいでもつらくても恋にもの思いする時、どうして涙が...