山川 信一

古典

《重病の床の気付き》

やまひにわつらひ侍りける秋、心地のたのもしけなくおほえけれはよみて人のもとにつかはしける 大江千里 もみちはをかせにまかせてみるよりもはかなきものはいのちなりけり (859) 紅葉葉を風にまかせて見るよりも儚き物は命なりけり 「病に苦しみま...
古典

《妻の、夫への遺言》

をとこの人のくににまかれりけるまに、女にはかにやまひをしていとよわくなりにける時よみおきて身まかりにける よみ人しらす こゑをたにきかてわかるるたまよりもなきとこにねむきみそかなしき (858) 声をだに聞かで別るる魂よりも無き床に寝む君ぞ...
古典

《女の、恋人への遺言》

式部卿のみこ閑院の五のみこにすみわたりけるを、いくはくもあらて女みこの身まかりにける時に、かのみこすみける帳のかたひらのひもにふみをゆひつけたりけるをとりて見れは、むかしのてにて、このうたをなむかきつけたりける 閑院の五のみこ かすかすにわ...