山川 信一

古典

《外聞を気にする心理》

題しらす  伊勢 ひとしれすたえなましかはわひつつもなきなそとたにいはましものを (810) 人知れず絶えなましかば侘びつつも無き名ぞとだに言はましものを 「題知らず 伊勢 人に知られず絶えてしまったなら、つらく思いながらも身に覚えがない噂...
古典

《理性と感情》

寛平御時きさいの宮の歌合のうた すかののたたおむ つれなきをいまはこひしとおもへともこころよわくもおつるなみたか (809) つれなきを今は恋ひじと思へども心弱くも落つる涙か 「寛平の御時の后の宮の歌合の歌 菅野忠臣 つれない人を今は恋すま...
古典

《叶わぬ前兆》

題しらす いなは あひみぬもうきもわかみのからころもおもひしらすもとくるひもかな (808) 逢ひ見ぬも憂きも我が身の唐衣思ひ知らずも解くる紐かな 「題知らず 因幡 あの人に逢えないのもつらいのも私の身からのことであるのに、それを思い知らず...