年度が替わりました。ついに、あたしは高校三年生になりました。春菜先輩は卒業して、文学部の哲学科に進みました。あたしはどうしようかな。まだ迷っています。
班は再編制されて、あたしが班長で、高二の桐野美鈴、中三の小山内純子に、高一の江波一美が加わりました。
今回の作品は森鷗外の『舞姫』です。『舞姫』は文語体で書かれています。さすがに中三の純子には難しい。そこで今回はあたしが解説しながら、みんなの質問を受ける形にしました。
誠先生からのアドバイスは、次の通りです。
「この作品は、文語体で書かれていて読むのに少し抵抗を感じるかもしれません。しかし、扱っているテーマは、現代にも通じるものばかりです。文語体の文章に慣れれば、とても興味深く読めるはずです。
この作品には様々なテーマが盛り込まれていますが、その中で特に注目してほしいのが〈母親〉の問題です。子どもがもっとも影響を受けるのが母親です。それも、無意識にその影響を受けています。たとえば、善悪の判断や好みなど、その影響は大きいです。知らず知らずに、母が望む生き方をしていることがあります。『舞姫』の主人公の太田豊太郎もまさにそれです。振り返ってみれば、『山月記』の李徴もそうだろうと思われます。李徴自身は、それを生まれつきと考えていたようですが、李徴が名誉を重んじる生き方をしたがったのには、恐らく母の影響があったはずです。ただし、『山月記』はそういう切り口では書かれていませんでした。それに対して、『舞姫』では、そのテーマが全面に出されています。どうぞ、『舞姫』を通して、母親の問題を考えてみてください。また、『舞姫』で扱われているテーマをできるだけ沢山見つけてください。どれもが現代性のあるテーマばかりです。その上で、それをもって自分自身を見直してください。」
小説は、自分の映し出す鏡です。この作品には、あたしのどんな姿が映し出されるのか、楽しみです。今、全世界はコロナテストを受けています。国も学校も個人もその解答を書いています。正解は未来にならないとわかりません。しかし、だからこそ、せめて精一杯の力で答えようと思います。
コメント
また先生の授業が始まり、嬉しいです。
美奈子さんはもう最上級生なんですね。すっかりお姉さんになりましたね。
舞姫ですね。更に深く勉強できることを楽しみにしています。
こちらこそよろしくお願います。
『舞姫』は文語文なので、少し取っつきににくいところもありますが、内容は現代的で興味深いものです。
一緒に楽しんで勉強しましょう。
らんさんも仰ってましたが、美奈子さんが最高学年になりリーダーとして活躍するようになったのですね。部員の皆さんとまた学べるのが嬉しいです。高校時代、確かに『舞姫』やりましたが母親問題をそこまでクローズアップして取り組んだ覚えがありません。新しい『舞姫』に出会えそうで楽しみです。
今回もよろしくお願いします。今回は美奈子の成長した姿をお伝えできればと思っています。
母の問題は極めて自然に浮かび上がってきます。『舞姫』には、「母」の語が多用されていますから。
自然体で読んで読んでいきます。