二日、なほおほつにとまれり。講師、ものさけなどおこせたり。
三日、おなじところなり。もしかぜなみのしばしとをしむこころやあらむ、こころもとなし。
問「もしかぜなみのしばしとをしむこころやあらむ、こころもとなし」とは、どのような思いか、答えなさい。
もう四日も大津に留まっている。講師が物や酒などを送ってくる。しかし、当人が現れることはない。前のような大騒ぎも困るが、儀礼的で思いやりが感じられない。何もすることのない今こそ来てくれてもよさそうなものなのに。既に我々は過去の存在なのだな。一抹の寂しさが胸をよぎる。じれったくてたまらない。そんな心境から物事を悪く取ってしまうのだ。
これではいけない。動けないのは、波風が激しいからである。波風がもうしばらくここに居てほしいと名残を惜しんでいるのであろうか、そう思って自らを慰めてみる。また、波風に心が有っても、こちらには心が無い。そんな洒落も言いたくなる。
事実を踏まえ、国司の帰京がどんなものなのかをリアルに描こうとしているのだろう。
コメント
京へ帰るのがそもそもの目的で、旅自体に目的がある訳ではないから尚のこと、なかなか進めない苛立ちは募りますね。単身で、ということもあったのかもしれませんが「亡き子」の話が出るあたり、国司として家族を伴っての赴任は普通に行われていたのでしょう。小さい人や女の人がこのような旅に同行する事の過酷さが想像されます。そして慣れない土地での暮らし、食べ物一つ取っても、国司としての赴任が大変だった事が伝わって来ます。
おしゃるとおり、この場合は家族を伴っての赴任でした。事実この地で子どもを亡くした人もいたのでしょう。これから先に幼い子も出て来ます。
女子どもも引き連れての船旅の困難さが描かれます。