2022-04

古典

第百四十段    遺産の心得

身死して財残る事は、智者のせざるところなり。よからぬ物蓄へ置きたるもつたなく、よき物は、心をとめけんと、はかなし。こちたく多かる、まして口惜し。「我こそ得め」などいふ者どもありて、あとにあらそひたる、様あし。後は誰にと心ざすものあらば、生け...
古典

《不自由な郭公》

寛平御時きさいの宮の歌合のうた 紀とものり よやくらきみちやまとへるほとときすわかやとをしもすきかてになく  (154) 夜や暗き道や惑へる郭公我が宿をしも過ぎがてに鳴く 「宇多天皇の御代、皇后温子様が主催された歌合わせの歌  紀友則 夜が...
古典

第百三十九段   植物の好み

家にありたき木は、松・桜。松は五葉もよし。花は一重なるよし。八重桜は奈良の都にのみありけるを、この比ぞ、世に多くなり侍るなる。吉野の花、左近の桜、皆一重にてこそあれ、八重桜は異様の物なり。いとこちたくねぢけたり。植ゑずともありなん。遅桜、又...