2022-02

古典

第百十六段   命名に表れるもの

寺院の号、さらぬ万の物にも、名を付くる事、昔の人は少しも求めず、ただありのままに、やすく付けけるなり。この比は深く案じ、才覚をあらはさんとしたるやうに聞ゆる、いとむつかし。人の名も、目なれぬ文字を付かんとする、益なき事なり。  何事もめづら...
古典

《春の物憂さ》

やよひにうくひすのこゑのひさしうきこえさりけるをよめる  つらゆき なきとむるはなしなけれはうくひすもはてはものうくなりぬへらなり  (128) 鳴き止むる花し無ければ鶯も果ては物憂くなりぬべらなり 「三月に鶯の声が久しく聞こえなかったのを...
古典

第百十五段  ぼろぼろの潔さ

宿河原といふところにて、ぼろぼろ多く集まりて、九品の念仏を申しけるに、外より入り来るぼろぼろの、「もしこの御中に、いろをし房と申すぼろやおはします」と尋ねければ、その中より、「いろをし、ここに候。かくのたまふは、誰そ」と答ふれば、「しら梵字...