題しらす よみ人しらす
うめのはなたちよるはかりありしよりひとのとかむるかにそしみぬる (35)
梅の花立ち寄るばかりありしより人の咎むる香にぞ染みぬる
「梅の花に立ち寄るという些細なことがあったために、あの人が「あなた、浮気してきたのね。誰の移り香なの?」と咎める香りに染まってしまったことだなあ。」
梅の香にまつわる、ちょっとしたエピソードである。梅の香は罪なヤツだと言うのだ。ただし、ニンマリとした笑いを誘うエピソードではある。ここではそれ自体が主役ではない。このエピソードは、あくまでも梅の香を印象づけるための脇役である。梅の香には、時にこんなドラマを作り出す力があるのだと言うのである。
コメント
ほんの少し立ち寄っただけなのに自分では気付かぬまま梅の香に染まっていた、周りの人から「!その香り、どこで付けて帰ったものか」と言われるほどに。羨むのと恨むの境目は紙一重(「咎める香りにあの人の心が染まってしまった」には思い到りませんでした!「人」とあるので思い人を想像しませんでした)誰もが梅の香、春の訪れに心が揺れてしまうのですね。
人とあるのは、自分を咎めることへの反発が働いているのでしょうか?
染まったのをあの人の心と解しましたが、ちょっと無理がありそうですね。染まったのは作者自身ですね。訂正します。