古典 治癒の見込なし これよりは騒ぐことはなけれど、精神の作用は殆《ほとんど》全く廃して、その痴《ち》なること赤児の如くなり。医に見せしに、過劇なる心労にて急に起りし「パラノイア」といふ病《やまひ》なれば、治癒の見込なしといふ。ダルドルフの癲狂院《てんきやうゐん... 2020.08.26 古典
古典 かくまでに我をば欺き玉ひしか 後に聞けば彼は相沢に逢ひしとき、余が相沢に与へし約束を聞き、またかの夕べ大臣に聞え上げし一諾を知り、俄《にはか》に座より躍り上がり、面色さながら土の如く、「我豊太郎ぬし、かくまでに我をば欺き玉ひしか」と叫び、その場に僵《たふ》れぬ。相沢は母... 2020.08.25 古典
古典 数週の後 人事を知る程になりしは数週《すしう》の後なりき。熱劇しくて譫語《うはこと》のみ言ひしを、エリスが慇《ねもごろ》にみとる程に、或日相沢は尋ね来て、余がかれに隠したる顛末《てんまつ》を審《つば》らに知りて、大臣には病の事のみ告げ、よきやうに繕《... 2020.08.24 古典