2019-09

古典

第百八段 ~愚痴~

昔、女、人の心を恨みて、 風吹けばとはに浪こす岩なれやわが衣手のかはくときなきと、つねのことぐさにいひけるを、聞きおひける男、 宵ごとのかはづのあまた鳴く田には水こそまされ雨はふらねど 昔、女が薄情な男の心を恨んで、〈私は風が吹くと常に波が...
古典

第百七段 ~代役~

昔、あてなる男ありけり。その男のもとなりける人を、内記にありける藤原の敏行といふ人よばひけり。されど若ければ、文もをさをさしからず、ことばもいひしらず、いはむや歌はよまざりければ、かのあるじなる人、案をかきて、かかせてやりけり。めでまどひに...
古典

第百六段 ~名歌~

昔、男、親王たちの逍遥したまふ所にまうでて、龍田河のほとりにて、 ちはやぶる神代も聞かず龍田河からくれなゐに水くくるとは 昔、男が、親王たちが行楽を楽しんでいらっしゃる所に参上して、竜田川のほとりで、〈不思議なことが数々あったと言う神代の頃...