古典

第十段 ~母親の見栄~

昔、男、武蔵の国までまどひ歩きけり。さてその国にある女をよばひけり。父は異人(ことびと)にあはせむといひけるを、母なむあてなる人に心つけたりける。父はなほ人にて、母なむ藤原なりける。さてなむあてなる人にと思ひける。このむこがねによみておこせ...
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第九段 その六

「京には見えぬ鳥なれば、みな人見しらず。渡守に問ひければ、「これなむ都鳥」といふを聞きて、  名にしおはばいざ言問はむみやこどりわが思ふ人はありやなしやと とよめりければ、船こぞりて泣きにけり。」  京では見かけない鳥なのである。渡守にその...
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第九段 その五

その河のほとりにむれゐて、思ひやれば、かぎりなく遠くも来にけるかな、とわびあへるに、渡守、「はや船に乗れ、日も暮れぬ」といふに、乗りて渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。さるをりしも、白き鳥の、はしとあしと赤き...