古典

第五十段 ~痴話喧嘩~

昔、男ありけり。うらむる人をうらみて、 鳥の子を十づつ十はかさぬとも思はぬ人を思ふものかは といへりければ、  朝露は消えのこりてもありぬべしたれかこの世をたのみはつべき また、男、  吹く風に去年の桜は散らずともあなたのみがた人の心は ま...
古典

第四十九段 ~妹~

昔、男、妹のいとをかしげなりけるを見をりて、 うら若みねよげに見ゆる若草を人のむすばむことをしぞ思ふと聞えけり。返し、 初草のなどめづらしき言の葉ぞうらなくものを思ひけるかな  男は、妹が年ごろになって、たいそうかわいらしくなったことに気づ...
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第四十八段 ~待たされる~

昔、男ありけり。馬のはなむけせむとて、人を待ちけるに、来ざりければ、 いまぞしるくるしきものと人待たむ里をば離れずとふべかりけり  友人が国司になった。送別の宴を設けようと人を待っていたが、来なかったので、〈今こそ知りました、待つのが苦しい...