古典

第六十五段 ~その四 恋と倫理~

かかれば、この女は蔵にこもりながら、それにぞあなるとは聞けど、あひ見るべきにもあらでなむありける、 さりともと思ふらむこそ悲しけれあるにもあらぬ身をしらずしてと思ひをり。男は、女しあはねば、かくし歩きつつ、人の国に歩きて、かくうたう、 いた...
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第六十五段 ~その三 罰~

この帝は、顔かたちよくおはしまして、仏の御名を御心に入れて、御声はいと尊くて申したまふを聞きて、女はいたう泣きけり。「かかる君に仕うまつらで、宿世つたなく、悲しきこと、この男にほだされて」とてなむ泣きける。 かかるほどに、帝聞しめしつけて、...
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第六十五段 ~その二 恋の病~

かくかたはにしつつありわたるに、身もいたづらになりぬべければ、つひに亡びぬべしとて、この男、「いかにせむ、わがかかる心やめたまへ」と仏神にも申しけれど、いやまさりにのみおぼえつつ、なほわりなく恋しうのみおぼえければ、陰陽師、神巫(かむなぎ)...