古典 えんびフライ えびフライ。発音がむつかしい。舌がうまく回らない。都会の人には造作もないことかもしれないが、こちらにはとんとなじみのない言葉だから、うっかりすると舌をかみそうになる。フライのほうはともかくとして、えびが、存外むつかしい。 えびフライ。さっき... 2020.03.10 古典
古典 盆土産 三浦哲郎 えびフライ、とつぶやいてみた。 足元で河鹿が鳴いている。腰を下ろしている石の陰にでもいるのだろうが、張りのあるいい声が川につけたゴム長のふくらはぎを伝って、ひざの裏をくすぐってくる。つぶやくにしても声にはならぬように気をつけないと、人声には... 2020.03.09 古典
古典 ルロイ先生、死ぬのは怖くありませんか 上野駅の中央改札口の前で、思い切ってきいた。「ルロイ先生、死ぬのは怖くありませんか。わたしは怖くてしかたがありませんが。」 かつて、わたしたちがいたずらを見つかったときにしたように、ルロイ修道士は少し赤くなって頭をかいた。「天国へ行くのです... 2020.02.29 古典