古典

対抗心

午後遅く、裏の谷川のよどみに漬けておいたビールを引き揚げて戻ってくると、隣の喜作が独りで畦道をふらついていた。隣でも父親が帰ったとみえて、真新しい、派手な色の横縞のTシャツをぎごちなく着て、腰には何連発かの細長い花火の筒を二本、刀のように差...
古典

冷凍食品のえびフライ

そんなにまでして紙袋の中を冷やし続けなければならなかったわけは、袋の底から平べったい箱を取り出してみて、初めてわかった。その箱のふたには、『冷凍食品 えびフライ』とあり、中にパン粉をつけて油で揚げるばかりにした大きなえびが、六尾並んでいるの...
古典

ドライアイス

土間の上がり框で、土産の紙袋の口を開けてみて、まず、盛んに湯気を噴き上げる氷にびっくりさせられた。ぶっかき氷にしては不透明で白すぎる、なにやら砂糖菓子のような塊が大小合わせて十個ほどもビニール袋に入っているので、これも土産の一つかと思って袋...