古典 墓参り 翌朝、目を覚ましたときも、まだ舌の根にゆうべのうまさが残っていた。あんなにうまい土産をもらったのだから、今朝もまた川へ出かけて、そばのだしを釣り直してこなければなるまいと思っていたのだが、その必要はなかった。父親が、一日半しか休暇をもらえな... 2020.03.24 古典
古典 幸せな食事 揚げたてのえびフライは、口の中に入れると、しゃおっ、というような音を立てた。かむと、緻密な肉の中で前歯がかすかにきしむような、いい歯ごたえで、この辺りでくるみ味といっているえもいわれないうまさが口の中に広がった。 二尾も一度に食ってしまうの... 2020.03.23 古典
古典 えびフライと雑魚 普段、おかずの支度はすべて姉がしているが、今夜はキャベツを細く刻むだけにして、フライは父親が自分で揚げた。煮えた油の中でパン粉の焦げるいいにおいが、家の中にこもった。四人家族に六尾では、配分がむつかしそうに思われたが、父親は明快に、「お前と... 2020.03.21 古典