古典

苦笑いとハンチング

バスが来ると、父親は右手でこちらの頭をわしづかみにして、「んだら、ちゃんと留守してれな。」 と揺さぶった。それが、いつもより少し手荒くて、それで頭が混乱した。んだら、さいなら、と言うつもりで、うっかり、「えんびフライ。」と言ってしまった。 ...
古典

父と息子の会話

父親が夕方の終バスで町へ出るので、独りで停留所まで送っていった。谷間はすでに日がかげって、雑魚を釣った川原では早くも河鹿が鳴き始めていた。村外れのつり橋を渡り終えると、父親はとって付けたように、「こんだ正月に帰るすけ、もっとゆっくり。」と言...
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それぞれの思い

祖母は、墓地へ登る坂道の途中から絶え間なく念仏を唱えていたが、祖母の南無阿弥陀仏は、いつも『なまん、だあうち』というふうに聞こえる。ところが、墓の前にしゃがんで迎え火に松の根をくべ足していたとき、祖母の『なまん、だあうち』の合間に、ふと、「...