古典

五年前のことなりしが・・・

五年前の事なりしが、平生《ひごろ》の望足りて、洋行の官命を蒙《かうむ》り、このセイゴンの港まで来し頃は、目に見るもの、耳に聞くもの、一つとして新《あらた》ならぬはなく、筆に任せて書き記しつる紀行文日ごとに幾千言をかなしけむ、当時の新聞に載せ...
古典

石炭をば早や積み果てつ

石炭をば早や積み果てつ。中等室の卓のほとりはいと静にて、熾熱燈《しねつとう》の光の晴れがましきも徒《いたづら》なり。今宵は夜毎にこゝに集ひ来る骨牌《カルタ》仲間も「ホテル」に宿りて、舟に残れるは余一人のみなれば。 「まず題名の「舞姫」から考...
古典

舞姫     森鷗外

年度が替わりました。ついに、あたしは高校三年生になりました。春菜先輩は卒業して、文学部の哲学科に進みました。あたしはどうしようかな。まだ迷っています。 班は再編制されて、あたしが班長で、高二の桐野美鈴、中三の小山内純子に、高一の江波一美が加...