古典

名はいつも一級の首にしるされたり

余は幼き比《ころ》より厳しき庭の訓《をしへ》を受けし甲斐《かひ》に、父をば早く喪《うしな》ひつれど、学問の荒《すさ》み衰ふることなく、旧藩の学館にありし日も、東京に出でゝ予備黌《よびくわう》に通ひしときも、大学法学部に入りし後も、太田豊太郎...
古典

いで、その概略を文に綴りて見む

嗚呼《あゝ》、ブリンヂイシイの港を出《い》でゝより、早や二十日《はつか》あまりを経ぬ。世の常ならば生面《せいめん》の客にさへ交《まじはり》を結びて、旅の憂さを慰めあふが航海の習《ならひ》なるに、微恙《びやう》にことよせて房《へや》の裡《うち...
古典

今の我は昔の我ならず

げに東《ひんがし》に還《かへ》る今の我は、西に航せし昔の我ならず、学問こそ猶《なほ》心に飽き足らぬところも多かれ、浮世のうきふしをも知りたり、人の心の頼みがたきは言ふも更なり、われとわが心さへ変り易きをも悟り得たり。きのふの是はけふの非なる...