古典

我学問は荒みぬ

我学問は荒《すさ》みぬ。屋根裏の一燈微に燃えて、エリスが劇場よりかへりて、椅《いす》に寄りて縫ものなどする側の机にて、余は新聞の原稿を書けり。昔しの法令条目の枯葉を紙上に掻寄《かきよ》せしとは殊にて、今は活溌々たる政界の運動、文学美術に係る...
古典

キヨオニヒ街の休息所

朝の珈琲《カツフエエ》果つれば、彼は温習に往き、さらぬ日には家に留まりて、余はキヨオニヒ街の間口せまく奥行のみいと長き休息所に赴《おもむ》き、あらゆる新聞を読み、鉛筆取り出でゝ彼此と材料を集む。この截《き》り開きたる引窻より光を取れる室にて...
古典

彼等親子の家に寄寓

社の報酬はいふに足らぬほどなれど、棲家《すみか》をもうつし、午餐《ひるげ》に往く食店《たべものみせ》をもかへたらんには、微《かすか》なる暮しは立つべし。兎角《とかう》思案する程に、心の誠を顕《あら》はして、助の綱をわれに投げ掛けしはエリスな...