古典 第九段 その二 その沢のほとりの木のかげにおりゐて、かれいひ食ひけり。その沢にかきつばたいとおもしろく咲きたり。それを見て、ある人のいはく、「かきつばた、といふ五文字を句のかみにすゑて、旅の心をよめ」といひければ、よめる。 唐衣きつつなれにしつましあれば... 2019.05.12 古典
古典 第九段 その一 昔、男ありけり。その男、身をえうなきものに思ひなして、京にはあらじ、あづまの方にすむべき国もとめにとてゆきけり。もとより友とする人、ひとりふたりしていきけり。道しれる人もなくて、まどひいきけり。三河の国八橋といふ所にいたりぬ。そこを八橋とい... 2019.05.11 古典
古典 第八段 ~信濃国へ~ 昔、男ありけり。京やすみ憂かりけむ、あづまの方にゆきて、すみ所もとむとて、友とする人、ひとりふたりしてゆきけり。信濃の国、浅間のたけに煙の立つを見て、 信濃なるあさまのたけに立つけぶりをちこち人の見やはとがめぬ 「京やすみ憂かりけむ」は疑... 2019.05.10 古典