古典

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第九段 その五

その河のほとりにむれゐて、思ひやれば、かぎりなく遠くも来にけるかな、とわびあへるに、渡守、「はや船に乗れ、日も暮れぬ」といふに、乗りて渡らむとするに、みな人ものわびしくて、京に思ふ人なきにしもあらず。さるをりしも、白き鳥の、はしとあしと赤き...
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第九段 その四

富士の山を見れば、五月のつごもりに、雪いと白うふれり。 時しらぬ山は富士の嶺いつとてか鹿子まだらに雪のふるらむその山は、ここにたとへば、比叡の山を二十(はたち)ばかり重ねあげたらむほどして、なりは塩尻のやうになむありける。 なほゆきゆきて、...
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第九段 その三

ゆきゆきて駿河の国にいたりぬ。宇津の山にいたりて、わが入らむとする道はいと暗う細きに、蔦かへでは茂り、もの心細く、すずろなるめを見ることと思ふに、修行者あひたり。「かかる道は、いかでかいまする」といふを見れば、見し人なりけり。京に、その人の...