古典

古典

第二十一段 ~その一 不可解な別れ~

昔、男女、いとかしこく思ひかはして、こと心なかりけり。さるを、いかなることかありけむ、いささかなることにつけて、世の中を憂しと思ひて、いてでいなむと思ひて、かかる歌をなむよみて、物に書きつけける。 いでていなば心かるしといひやせむ世のありさ...
古典

第二十段 ~心変わり~

昔、男、大和にある女を見て、よばひてあひにけり。さてほどへて、宮仕へする人なりければ、かへり来る道に、三月ばかりに、かへでのもみぢのいとおもしろきを折りて、女のもとに、道よりいひやる。 君がため手折れる枝は春ながらかくこそ秋のもみぢしにけれ...
古典

第十九段 ~独占欲~

昔、男、宮仕へしける女の方に、御達(ごたち)なりける人をあひしりたりける、ほどもなく離れにけり。同じ所なれば、女の目には見ゆるものから、男は、あるものかとも思ひたらず。女、 天雲のよそにも人のなりゆくかさすがに目には見ゆるものからとよめりけ...