古典

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第六十一段 ~筑紫の女~

昔、男、筑紫までいきたりけるに、「これは、色好むといふすき者」と、すだれのうちなる人のいひけるを、聞きて、 染川を渡らむ人のいかでかは色になるてふことのなからむ 女、返し、 名にしおはばあだにぞあるべきたはれ島浪のぬれぎぬ着るといふなり  ...
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第六十段 ~逃げた妻~

昔、男ありけり。宮仕へいそがしく、心もまめならざりけるほどの家刀自、まめに思はむといふ人につきて、人の国へいにけり。この男、宇佐の使にていきけるに、ある国の祇承(しぞう)の官人の妻にてなむあると聞きて、「女あるじにかはらけとらせよ。さらずは...
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第五十九段 ~恋と生死~

昔、男、京をいかが思ひけむ、東山にすまむと思ひ入りて、 すみわびぬいまはかぎりと山里に身をかくすべき宿もとめてむ かくて、ものいたく病みて、死に入りたりければ、おもてに水そそぎなどして、いきいでて、 わが上に露ぞ置くなる天の河とわたる船のか...