古典

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第六十四段 ~逢わぬ恋~

昔、男、みそかに語らふわざもせざりければ、いづくなりけむ、あやしさによめる、 吹く風にわが身をなさば玉すだれひま求めつつ入るべきものを返し、 とりとめぬ風にはありとも玉すだれたが許さばかひま求むべき  昔、男が、こっそり二人きりで(「みそか...
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第六十三段 ~同情は恋か~

昔、世心つける女、いかで心なさけあらむ男にあひ得てしがなと思へど、いひいでむもたよりなさに、まことならぬ夢がたりをす。子三人を呼びて語りけり。ふたりの子は、なさけなくいらへでやみぬ。三郎なりける子なむ、「よき御男ぞいで来む」とあはするに、こ...
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第六十二段 ~残酷な仕打ち~

昔、年ごろ訪れざりける女、心かしこくやあらざりけむ、はかなき人の言につきて、人の国なりける人につかはれて、もと見し人の前にいで来て、もの食はせなどしけり。夜さり、「このありつる人たまへ」とあるじにいひければ、おこせたりけり。男、「われをばし...