古典

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第八十一段 ~遠い記憶~

昔、左のおほいまうちぎみいまそがりけり。賀茂河のほとりに、六条わたりに、家をいとおもしろく造りて、すみたまひけり。十月のつごもりがた、菊の花うつろひさかりなるに、もみぢのちぐさに見ゆるをり、親王たちおはしまさせて、夜ひと夜、酒飲みし遊びて、...
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第八十段 ~在原家と藤原家~

昔、おとろえたる家に、藤の花植ゑたる人ありけり。三月のつごもりに、その日、雨そほふるに、人のもとへ折りて奉らすとてよめる、 ぬれつつぞしひて折りつる年のうちに春はいく日もあらじと思へば  昔、衰えた家に、藤の花を植えていた人がいた。三月の月...
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第七十九段 ~一族の繁栄への期待~

昔、氏のなかに親王生れたまへりけり。御産屋に、人人歌よみけり。御祖父(おほんおほぢ)がたなりけるおきなのよめる、 わが門に千ひろあるかげ植ゑつれば夏冬たれかかくれざるべきこれは貞数の親王、時の人、中将の子となむいひける。兄の中納言行平のむす...