古典

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第八十二段 ~その三 主従関係~

親王、歌をかへすがへす誦じたまうて、返しえしたまはず。紀の有常、御供に仕うまつれり。それが返し、 ひととせにひとたび来ます君待てば宿かす人もあらじとぞ思ふかへりて宮に入らせたまひぬ。夜ふくるまで酒飲み、物語して、あるじの親王、酔ひて入りたま...
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第八十二段 ~その二 酒宴~ 

また、人の歌、 散ればこそいとど桜はめでたけれ憂き世になにか久しかるべきとて、その木のもとは立ちてかへるに、日暮になりぬ。御供なる人、酒をもたせて、野よりいで来たり。この酒を飲みてむとて、よき所を求めゆくに、天の河といふ所にいたりぬ。親王に...
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第八十二段 ~その一 桜と恋~

昔、惟喬の親王と申すみこおはしましけり。山崎のあなたに、水無瀬といふ所に、宮ありけり。年ごとの桜の花ざかりには、その宮へなむおはしましける。その時、右の馬の頭なりける人を、常に率ておはしましけり。時世経て久しくなりにければ、その人の名を忘れ...