古典

古典

第八十七段 ~その二 滝の歌~

さる滝のかみに、わらうだの大きさして、さしいでたる石あり。その石の上に走りかかる水は、小柑子、栗の大きさにてこぼれ落つ。そこなる人にみな滝の歌よます。かの衛府の督まづよむ、 わが世をば今日か明日かと待つかひの涙の滝といづれ高けむ あるじ、次...
古典

第八十七段 ~その一 物見遊山~

昔、男、津の国、菟原(うばら)の郡(こほり)、蘆屋の里にしるよしして、いきてすみけり。昔の歌に、 蘆の屋のなだのしほ焼きいとまなみつげの小櫛もささず来にけりとよみけるぞ、この里をよみける。ここをなむ蘆屋のなだとはいひける。 この男、なま宮づ...
古典

第八十六段 ~若い日の恋~

昔、いと若き男、若き女をあひいへりけり。おのおの親ありければ、つつみて、いひさしてやみにけり。年ごろ経て、女のもとに、なほ心ざし果たさむとや思ひけむ、男、歌をよみてやれりけり。  いままでに忘れぬ人は世にもあらじおのがさまざま年の経ぬれば ...